利益を生むビジネスモデル

ビジネスを考える上で、最も重要なのは「お金をどう稼ぐか」です。「利益を上げていく仕組み」がなければ、どんなに優れたビジネスモデルでも継続できません。

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中堅出版社で編集を担当しています。

今、過去のコンテンツを有効活用する電子書籍ビジネスへの進出を計画中で、私も準備グループの一員に選ばれました。

すでに着手している他社のように、紙媒体を電子媒体に置き換えるだけでは従来とほとんど変わりません。

継続的且つ発展的な収益の結びつく新しい発想で始めたいのですが、どういう方法があるでしょうか。(Iさん・出版社勤務)

回答

出版関係者の多くは固定観念が強く、アナログからデジタルへの変換しか考えていません。

現在の「出版社→取次→書店」という流通ルートはそのままで、電子取次を通して電子書籍を販売するやり方だといいます。

しかし、電子書籍ならではのビジネスモデルを考えなければ意味がありません。

従来とは全く違う流通経路、販売方法、利益モデルに変えていかなければ収益は出ません。

一番の大問題は、電子書籍といっても川上(電子書籍の制作)の整備レベルに留まっていることです。

ビジネスとして電子書籍に乗り出すには、川下の開発も必要です。

例えば、デジタルカメラが出始めた当初、データはRAWでした。

プロ用として画質のクオリティを重視したからですが、容量が重く扱いにくいものでした。

カメラメーカーが賢かったのは、その後データ形式をRAWからJPEGにコンバートしたことです。

大多数の一般ユーザーに受け入れられるには、画質の美しさより、使いやすいデータ形式への変換が必要だったのです。

現在の出版社は、いわばRAWデータをせっせと作っているだけなのです。

川下とは、電子書籍の具体的な売り込み先です。

紙媒体のように書店を経由して広い読者層を相手にするより、ターゲットを絞って直接売り込んだ方がいいでしょう。

マージンも取られませんしね。

例えば、女性誌がたくさん置いてある美容院。

そこに置いてある雑誌をできるだけタブレット端末に置き換えていく。

常に最新号のデータが配信されますし、配達や廃棄の手間もなくなります。

次にマンガ喫茶。

本をストックする場所がいらないので、店内のスペースを有効活用できますし、劣化した本の入れ替えなどのメンテナンスも不要です。

3つ目は病院です。

長く入院生活を送らなければならない人にとって、絶好の娯楽になります。

タブレット端末なら紙と比べて衛生面の管理もしやすいでしょう。

病院でもコミックは人気を集めると思います。

小児科はもちろん、産婦人科では女性コミックが、中年以降の男性が多い診療科なら『あしたのジョー』『巨人の星』などの懐かしい少年マンガがうけると思います。

これら3つならターゲットもそれぞれ違い、かなり広い層をカバーできます。

タブレットなどの端末を用意しなければなりませんが、今後低価格化が進むでしょうし、かなり現実的なプランではないでしょうか。

ニーズのある川下をしっかり顧客化していくことが大切です。

しかし、川下を開発するだけではだめです。

川上と川下を繋ぐ『川中』が電子書籍ビジネスで最も重要です。

川中に当たる会社で、API(Application Program Interface)を提供するのです。

本を読むためのアプリケーションを開発する会社がなければ、電子書籍を流通させ、収益化していくビジネスモデルが完成しません。

電子書籍を普及させていくためには、この会社の存在が必須です。

分かりやすい例が楽天です。

楽天は参加ショップを増やしていくと同時に、APIの会社を設立してシステムを統一しました。

フルメニューのアプリケーションを用意して、足りない機能をレンタルするという戦略を取ったのです。

例えば、検索機能や商品画像があるが決済機能のないショップにそれを貸し出すなど、eコマースに必要なメニューを揃えて仕様を統一し、ユーザーの使い勝手を向上させたのです。

電子商店街としての体裁を整えたことが成功の大きな要因だったのです。

ところが、出版業界は一部の大手が音頭を取って、協会を設立したりしていますが、結局アナログをデジタルに変えているだけで、業界を横断するプラットフォーム構築に取り込もうとしていません。

電子書籍ビジネスとして展開していくには、『川上(出版社):コンテンツのデジタルデータを提供』『川中(中間機関):閲覧のためのアプリケーションを開発・提供』『川下(端末):美容院・マンガ喫茶・病院などの販売先』という流れをきちんと整備しなければなりません。

APIの会社設立には資金も必要なので、即実行というわけにはいかないでしょうが、長期的に考えればこのシステム確立が不可欠です。

まず、取次や書店のルート以外の直販ルートを開発し、収益を上げていく発想です。

『インストールベース利益モデル』では、ベースとなるシステムや機材の投入後、それに付随する消耗品や回避などで定期的な売上を獲得していきます。

身近なものに、コピー機やファクシミリがあります。

この利益モデルにのっとれば、タブレット端末に読書用アプリケーションを入れて販売した後、引き続き提供するコンテンツで収益を上げていくのが出版社としては基本でしょう。

では、実体のないデジタルデータをどんな価格設定で課金していくべきか。

それは「1回読んだごとに課金する」従量制です。

現状は、紙の本と同じように「一定料金を徴収して読み放題」が主流ですが、1冊500円のコミックを1回50円で読めるとしたら魅力的でしょう。

紙媒体と違って制作コストが低く、売上がほぼ収益になりますから回収が早いです。

『ONE PIECE』のように数十巻もある作品は2、3巻まで無料で、以降の巻は1巻1回につきいくらという従量制で徴収する。

紙媒体に比べ1/10の料金で読めるのですから、喜んで購入する読者がいるでしょう。

書籍の場合は、最初の数ページを無料公開、ただし以降は購入しないと読めないように設定しておきます。

これもインストールベース利益モデルです。

データはあらかじめ全部インストールされているものの継続的に料金を支払わないと読めないわけですから。

今の電子書籍の価格設定を見ると、紙媒体より少し安い価格で販売するケースが主流です。

しかし、1500円の書籍を1200円で売ったとしたらそれっきりです。

タイムボムの時間制限制や、月額料金で読み放題にという声が圧倒的ですが、時間内にデータを流通されてしまうリスクが生まれますし、読み放題にすると利益が出ない、どちらもビジネスベースの発想ではないと思います。

電子書籍の従量制は、1冊を売り切るモデルからデータを使い回す『レンタル』に発想を転換させることです。1500円の書籍を300円で売れば、敷居が低くなって読者が増えるはずです。

紙媒体のように実体があるモノを売るわけではないので、従来とは違う課金方法を取るべきでしょう。

簡単にいえば、デジタルの貸本屋です。

現状の動きを見ていると、今までのビジネスモデルをデジタルに置き換える範疇でしか考えていません。

それでは同じ商品を安く売ってマージンを取り合う商売になっていまいますから、ビジネスとして必ず行き詰まります。

今はまだ、川上から川下までのバリューチェーンを押さえているところはまだないでしょう。

このシステム整備に成功したところが業界の主導権を握り、電子書籍ビジネスの『勝ち組』になることでしょう。

それは、一般の消費者にも分かりやすくて使い勝手がよく、リーズナブルな方法で流通ルートを作り上げたところです。

そういう意味でいえば、成功の鍵は『価値連鎖ポジション利益モデル』を意識していくことかもしれません。

これは、今後の展開の先を読みながら常に先手を取っていくもので、Googleが代表例です。

位置検索、動画検索、メール、アンドロイドとの連携など、どんどん新しいWEBサービスを打ち出しながら検索連動型広告という最高の利益モデルをものにしました。

音楽プレーヤーとタブレット端末は、多くのメーカーがAppleのiPod、iPadの後塵を拝しています。

スマートフォンはアンドロイドの登場で差が縮まりましたが、iPhoneは大きな利益をAppleにもたらしました。

故スティーブ・ジョブズのように独特なビジョンを持っている人はごく一部ですが、時代の流れに沿って一歩先の手を打っている企業にはなかなか追いつけません。

先行者利益ともいえますが、業界標準となって主導権を握ると、次の流れが見えてくるし、流れそのものをコントロールできるようになっていきます。

時代の流れの速いネット業界では、覇権を握った先行者利益が特に大きいものです。

自社が基準になることでますます有利になり、利益を拡大していきます。

そして、一番儲かるところを押さえるのです。

電子書籍もネット書店で販売したり、出版社サイトで売るだけではなく、出版業界の楽天を目指すべきです。

単独では無理なら、数社でグループを立ち上げる形にしたり、アプリケーションの会社はスポンサー企業に出資を募る形にしたりするのはいかがでしょうか。


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