利益を生むビジネスモデル

ビジネスを考える上で、最も重要なのは「お金をどう稼ぐか」です。「利益を上げていく仕組み」がなければ、どんなに優れたビジネスモデルでも継続できません。

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ゲームアプリケーションを開発するソフトハウスを経営しています。

近年売上自体が落ち込んでいる上、経費がかさんで収益が上がりません。

特に負担が大きいのはシステムエンジニアの人件費です。

経営を立て直すために人員整理を考えていますが、あからさまなリストラはモチベーションが下がりますし、優秀な人材に退職されるのも困ると悩んでいます。(Hさん・ソフトハウス経営)

回答

このケースは、売上が落ちている上に、技術者の人件費が経営を圧迫しています。

給与が固定費でそれなりに払っているなら、やはり手を打たないわけにはいかないでしょう。

秀な人材は残しつつ、生産性の上がらない人材の人件費を削減していく方法を講じる必要があります。

一般的な方法はリストラ、早期退職、一律賃下げです。

実行すれば確かに人件費を圧縮できますが、社内のモラルは著しくダウンしてしまいます。

さらに言えば、このどれかに着手して本業自体が立ちゆかなくなったパターンも珍しくありません。

中小企業ほど人材は重要な資産です。

優秀な技術者に辞められては元も子もありません。

そこでまず、考えたいのは人件費の変動費化です。

流通業界は元々パートタイマーの比率が高く、人件費の変動費化が進んでいますが、その実体は正社員のアシスタント業務や繁忙期と閑散期の雇用調整的な面が強いのでしょう。

「自在に調整できる使い捨ての人材」という位置づけだと思います。

福利厚生費の負担も少なく、基本的に昇級も責任もない代わり、軽作業に従事しているケースが大半です。

ところが、スーパーマーケットチェーンの『ヤオコー』ではパートタイマーを戦力化して、人件費をプラスの方向に変動費化する戦略を取っています。

毎年人件費は約5%ずつ増えているものの、1人あたりの売上高も約4%ずつ上昇しており、地域トップ水準の給料と権限委譲をテコにパートタイマーの士気を高め、店舗の常駐する社員を削減しています。

つまり、優秀な人材であればパートタイマーであっても責任あるポジションに就ける代わりに、人件費を乗せていくやり方です。

例えば、価格設定、商品発注、プロモーションをパートタイマーに任せています。

世の中の主流は、売上が落ちるのと比例して人件費をどんどん切っている方向なのに、ヤオコーは変動費化した人材に投資して売上に繋げているのです。

おそらく、仕事の内容によって時給のレート変動しているはずです。

パートタイマーを一律に扱うのではなく、適材適所に配置することでより生産性の高い組織作りをし、成果に結びつけています。

ヤオコーの手法は『マルチコンポーネント利益モデル』に該当するでしょう。

簡単にいうと、同じ商品の販売価格を変えて、高収益化を図っていく戦略です。

例えば、コーラ1本の利益率を考えれば300~500円の価格になるホテルだけで売ればいいようなものですが、ブランド力を上げないと扱ってもらいないので、スーパーでも自動販売機でも低価格で売っています。

色々な販売チャンネルを駆使して、同一商品の価格を変えながら、高収益を確保するのがマルチコンポーネント利益モデルです。

ヤオコーのやり方は、単に社員を減らしてパートタイマーを増やすのとも、一時盛んに導入されて失敗に終わった成果主義とも違い、削減だけでなく人件費を変動費化させて、主要なセクションを優遇することによって総合的な収益を上げていく。

正にマルチコンポーネント利益モデルの発想です。

ヤオコーでは、鮮魚売り場のパートタイマーにその日の気温に合わせた献立アイデアを募ったり、仕入れや値引きの判断も任せたりしているそうです。

例えば、暑い日なら刺身の他にマリネやカルパッチョなど涼感を誘うメニューを、寒い日にはムニエルやフライ、それに調味料をプラスしたセット販売などもパートタイマーの裁量でやらせています。

スーパーで買い物する主婦と同じ目線で、商品の適正な値段を考え、メニューを提案していますから、他のスーパーと同じ商品を扱っていても不必要な値下げや廃棄ロスが減って、粗利率が向上しているといいます。

働く側にとっても、最良を持たされているから意欲的に働ける。

つまり、人件費を変動費化するだけでなくモチベーションを上げる工夫が重要です。

仮に、社員300人の、印刷物の制作が主力業務な会社でマルチコンポーネント利益モデルの発想で社員を分類し、仕事内容と能力に応じて人件費の圧縮と変動費化を着手するとします。

社員の大半の仕事内容はそのままで、非常に優秀な一部の人材は新規事業のために設立する新会社に移籍。

作業的な業務に従事する人は在宅勤務専門の別会社に移ってもらう提案をしました。

A.企画力に優れ、新規事業に関わる人…10名程度
→新会社へ移籍。給与は現状維持だが、ストックオプションなどの成功報酬あり
B.従来と同じ制作中心の既存事業に携わる人…200名程度
→中核会社へシフト。給与は現状維持だが、基本的に昇給はなし
C.年度版の更新や校正作業に従事する人…100名程度
→専門会社へ移籍。給与は現状の7割で在宅勤務に。納期さえ厳守すれば副業や兼業もOK

この提案には3つの狙いがあります。

1つ目は会社ごとにはっきり目的を分け、それぞれの業務内容に応じた人材を配置すること。

2つ目は現在の給与体系を見直し、人件費を圧縮すること。

3つ目は社員のモラルを落とさず新スタートが切れることです。

この案を見て、敏感な方ならピンと来るでしょうが、Cの社員はあからさまではありませんが結局はリストラです。

単純作業に従事する人は辞めてもらっても構わないと、暗黙の内に迫っています。

ただし、年配や子育て中で在宅勤務の方が都合がいいという方、7割とはいえ給料がもらえるので早期退職よりはマシだと思う方、「副業もOK」というのにメリットを感じる方などはCを希望するでしょう。

過半数を占めるBは、現状維持という点で安堵するでしょうし、Aは自分の力が試すチャンスとなるでしょう。

もちろん全員が歓迎するわけではありませんが、それぞれの立場で身の振り方を考える雰囲気は形成されるでしょう。

システムエンジニアも3つのランクに分類できます。

A.新製品のプランニングができるエンジニア

B.企画に沿ってプログラミングを担当するエンジニア

C.バージョンアップやテストといった作業に従事するエンジニア

Aがマネジメント層、Bが中核層、Cが専門実務層になります。

Aに該当するのは社長・役員・プランナーなど、実際に会社を引っ張っていける力のあるスタッフは全体の10%ほどです。

時間の経過とともにクリエイターの年齢が上がってくると、生産性がいまいちな割には給料が高く、経営を圧迫し始める。

その上不景気で売上は下がるばかり。

厳しい状況に追い込まれている会社は少なくないと思います。

コストはトコトン切り詰めていますから、人件費くらいしか削れるところがないわけでしょうが、そこをぐっと我慢してマルチコンポーネント利益モデルの発想で乗り切っていくのが得策だと思います。

もちろん、一方的な査定では納得してもらえないでしょう。

社員の能力別分類は、人事評価制度と表裏一体で進めなければなりません。

先程の印刷会社の例でいくと、上司と社員が話し合って目標値を決め、現状維持ならB評価、現状以下ならC評価、逆に現状よりアップしたらA評価というのを踏まえて、次のような組織改編に結びつけます。

A評価 新会社への移籍を打診する
B評価 現状維持の中核会社に残る
C評価 給与削減の在宅勤務スタッフへ

一見残酷ですが、優秀な人間とそうでない人間を選抜して差をつけるのが、一番正しい方法だと思います。

平等に負担を求めて、一律の値下げや早期退職を実施すると優秀な人材は面白くない。

さらに指名解雇に踏み切ろうならもっと深い傷が会社に残るでしょう。

B評価の人も成果を上げてAになれば昇給や新規の会社への移籍もあり得るといったように、評価の基準を明らかにしておけばお互い納得ずくで対応できます。

繰り返しますが、人件費の削減だけでなくモチベーションを維持する方法を考えながら推進していくことがポイントです。


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